結論
1つに絞るなら、第三者が発行した書面までたどれるかどうかが最後まで残ります。純度も含有量も製造も、書面の有無という同じ物差しに乗せられるためで、他の基準はこの1つを通過した候補の中で比べれば足ります。
9項目のうち、書面の現物までたどれるのはいくつか?
9項目のうち、第三者が発行した書面の現物までたどれるのは3項目です。残る6項目は、書面ではなく販売者の説明として返ってくる性質のものです。
手元の公開済み証憑を、選び方チェックリストの9項目に突き合わせて数えました。現物までたどれたのは、純度、競技用途の混入検査、製造工程の管理の3項目です。純度については、一般財団法人 日本食品検査 首都圏事業所が発行した試験成績証明書があり、証明書番号は 320G039306-001、発行日は2021年1月12日、試験方法は高速液体クロマトグラフ法と記載されています。競技用途の混入検査については、Informed Sport 認証取得(アンチ・ドーピング第三者認証)があり、登録番号は 06465 です。製造工程の管理については、国内GMP水準の製造管理(JIHFS)の認定書があります。
3という数字は、けっして多くありません。ただし、この3項目に共通する性質が、基準を1つに絞るときの手がかりになります。3項目とも発行元が販売者ではなく、番号と発行日から発行元の側にたどり直せます。残る6項目は、答えが返ってきても、その答えの正しさを買う側から検証する経路がありません。
数え方も書いておきます。9項目それぞれについて、手元にある資料を並べ、発行者名と番号と発行日の3つがそろって記載されているものだけを現物ありとしました。名称だけが載っている資料、数値だけが載っている資料は、現物ありに数えていません。この数え方だと自社の項目も落ちますが、落ちる項目を含めたまま公開しないと、基準表として他の製品に当てられなくなります。
| 9項目のうちの項目 | 返ってくる形 | 発行元にたどれるか |
|---|---|---|
| 純度 | 書面(試験成績証明書) | たどれる |
| 競技用途の混入検査 | 書面(認証の証明書) | たどれる |
| 製造工程の管理 | 書面(認定書) | たどれる |
| 含有量の表示 | 表示(商品ページ) | 販売者の表示まで |
| 剤形と粒数 | 表示(商品ページ) | 販売者の表示まで |
| 直近ロットの検査 | 説明(言葉) | たどれない |
| 返品と解約の条件 | 表示+説明 | 事業者表示まで |
| 問い合わせ窓口 | 表示(事業者表示) | 事業者表示まで |
| 利用者の感想 | 説明(言葉) | たどれない |
自社調べ。選び方チェックリストの9項目を、返ってくる形と検証経路の有無で分類したものです。
なぜ、基準の数が多いほど決められなくなるのか?
基準の数と決めやすさは、途中から逆に動きます。項目が3つを超えたあたりから、候補ごとに勝ち負けがばらけて、総合順位が付かなくなるためです。

選び方の記事は、確かめられる項目を数えあげる形で書かれることが多くあります。項目を網羅する書き方には理由があり、何を見落としているかを知るには一覧が要ります。一方で、実際に1つを選ぶ場面では、9項目のうち候補Aが5項目で優り、候補Bが4項目で優る、といった分かれ方が起きます。項目に重みを付けていないと、この分かれ方は同点として扱われ、決め手が消えます。重みを付ける代わりに使えるのが、項目をふるいの順番に並べ替える方法です。落ちた候補は以降の項目を比べる必要がなくなるので、比較の量そのものが減ります。
ふるいの一段目に置くべきなのは、通過できない候補が実際に出る項目です。全候補が通過してしまう項目を先頭に置いても、候補は1つも減りません。書面の有無は、実測の調査を見るかぎり、はっきりと分かれる項目です。
この記事で扱わないこと・分かっていないこと
- 書面がそろっている製品のほうが、飲んだあとの感じ方まで良いかどうかは分かっていません。書面は中身の裏づけであって、体感の予測ではありません。
- 検査していないロットの中身は、どの書面からも分かりません。書面は測った対象について測った時点のことだけを示します。
- 9項目のうち何項目そろえば十分か、という一般的な合格ラインを示した公開資料はありません。
書面の有無を一段目に置く根拠は何か?
市販品の実測調査で、表示と中身の差がはっきり出ているためです。表示の数値だけでは中身の見当がつかない範囲が、数字として公表されています。
ChromaDex が2021年に公表した調査では、通販の上位22製品のうちラベル表示どおりだったのは14%で、64%は表示成分が1%未満でした。Sandalova らが GeroScience 誌に2024年に報告した市販18製品の実測では、ラベルとの乖離が +28.6% から -100% の範囲にあり、うち3製品は検出されていません。この幅の中では、表示の数値どうしを比べる作業に意味を持たせにくくなります。表示を比べる前に、その表示を裏づける書面が出てくるかどうかで候補を切るほうが、比較の土台が安定します。
書面が出てくること自体は、品質の順位を決めるものではありません。分かるのは、その製品について第三者が測った記録が存在し、番号と日付から発行元側にたどれる、というところまでです。それでも一段目に置く値打ちがあるのは、通過できない候補が実際に出る項目だからです。
数字の読み方も添えておきます。ラベル表示どおりだった割合が14%という数字は、残る86%が偽物だという意味ではありません。表示と実測がずれる幅が広いという意味で、ずれの向きは多い側にも少ない側にも出ています。買う側にできるのは、ずれの有無を自分で測ることではなく、第三者が測った記録があるかどうかを見ることです。
- 14%通販上位22製品のうち、ラベル表示どおりだった割合(ChromaDex 2021)
- 64%同じ調査で、表示成分が1%未満だった割合
- +28.6% 〜 -100%市販18製品の実測で確認されたラベルとの乖離の幅(Sandalova et al., 2024)
9項目を1つに落とすには、どの順番で見ればよいか?
落とす順番は3段です。第三者の書面でふるい、退出の条件でふるい、最後に扱いやすさで1つに決めます。上の段で落ちた候補は、下の段を見る必要がありません。
一段目は第三者の書面です。純度、混入検査、製造工程の管理のいずれかについて、発行者名と番号と発行日まで書かれた記録が出てくるかを見ます。ここで候補はかなり減ります。二段目は退出の条件です。やめたくなったときの連絡先と期限、最低継続回数の有無が、申し込む前の画面に文字で書かれているかを見ます。長く飲む前提なら、入口より出口の条件のほうが効いてきます。三段目は扱いやすさです。1回に飲む粒数、1箱で何日分になるか、置き場所に収まるか。ここは好みの領域なので、最後に置くと迷いが短くなります。
3段の順番を入れ替えないことにも意味があります。扱いやすさから入ると、書面が無い候補が最後まで残り、最終判断で書面の話を持ち出す形になります。順番を固定しておくと、どの段で落ちたかが記録に残り、次に別の製品を見るときも同じ物差しを再利用できます。
落ちた候補を消さずに残しておくと、あとで効いてきます。一段目で落ちた理由が書面の不在なのか、書面はあるが日付が古いのかで、次に見直すときの扱いが変わるためです。落ちた理由をひとことだけ書き添えておけば、半年後に同じ候補を見たときに、ゼロから調べ直さずに済みます。
- 一段目|第三者の書面|発行者名・番号・発行日まで書かれた記録が出てくるか。数値だけの記載は通過としない。
- 二段目|退出の条件|停止と解約の連絡先・期限・最低継続回数の有無が、申し込む前の画面に書かれているか。
- 三段目|扱いやすさ|1回の粒数、1箱で何日分か、置き場所に収まるか。好みの領域なので最後に置く。
一段目を通過したかどうかは、どこを見て判定するか?
判定するのは書面の5欄です。発行者名、供試品名、試験方法、試験結果、発行日がそろっていれば通過、どれかが欠けていれば保留として扱います。

発行者名は、測ったのが販売者自身か第三者かを分けます。供試品名は、測った対象が売られている製品と同じかを分けます。試験方法は、何をもって純度や含有量と呼んでいるかを分けます。試験結果は、表示されている数値の出どころになります。発行日は、その測定がいつ時点のものかを分けます。5欄のどれかが欠けている記載は、数値が誤りだという意味ではなく、買う側から確かめられる範囲が狭いという意味です。販売ページに数値だけが置かれている場合は、この5欄がどこにあるかを販売者に尋ねるのが最短の確認になります。
5欄がそろっていても、その書面が何を保証していないかは押さえておきます。書面が示すのは、供試品として提出された対象について、書かれた方法で測った結果です。検査していないロットのことも、開封後の状態のことも、書面の外側にあります。書面の有無で候補を切るのは、確かめられる範囲が広い候補を残す作業であって、品質の順位を付ける作業ではありません。
- 発行者名測ったのが第三者かどうか。販売者自身の測定は、確かめられる範囲がそのぶん狭くなる。
- 供試品名測った対象が、いま売られている製品と同じ名前かどうか。
- 試験方法何をもってその数値と呼んでいるか。方法名が書かれていない数値は比較に使いにくい。
- 試験結果表示されている数値の出どころ。表示と書面の数値が一致しているかを見る。
- 発行日その測定がいつ時点のものか。日付が無い記録は、時点を特定できない。
基準を9つ見る場合と、1つに絞る場合では何が変わるか?
変わるのは、比べる回数と、決められない場面の数です。9項目を横並びにすると候補ごとに勝ち負けがばらけますが、順番に落とすと比較そのものが途中で終わります。
比べる回数の差は、候補が増えるほど開きます。候補が5つあれば、9項目を横並びにする場合は45回の比較になります。一段目で3つが落ちれば、残り2候補について二段目と三段目を見るだけで済み、比較は数回で終わります。選ぶ作業が長引く原因は、候補の多さより、比較の打ち切り条件が決まっていないことのほうにあります。
| やり方 | 比べる回数 | 決まらないときに起きること |
|---|---|---|
| 9項目を横並びで見る | 候補数 × 9項目 | 候補ごとに勝つ項目が分かれ、総合順位が付かない |
| 3段のふるいで落とす | 一段目で残った候補の分だけ | 落ちた段が記録に残るので、判断をやり直せる |
| 感想から先に見る | 候補数 × 感想の数 | 条件が書かれていないため、比較の土台がそろわない |
自社調べ。同じ9項目を、見る順番だけ変えたときの違いを整理したものです。
よくある質問
- 書面が出てこない製品は、選んではいけないのですか。
- 選んではいけないという意味ではありません。書面が無い場合、その製品について買う側から確かめられる情報が1つ少ない状態になります。書面を出せる候補が他にあるなら、購入後に確認し直せる範囲はそちらのほうが広くなります。
- 一段目を通過する候補が1つも残らないときは、どうしますか。
- 一段目の条件を、書面の現物から発行元の名称まで一段ゆるめます。ゆるめたことを記録に残しておけば、あとから条件を戻して比べ直せます。条件を最初から低く置くより、下げた事実が見えるほうが判断を再現できます。
- 純度と含有量では、どちらを先に見ますか。
- 先に見るのは純度です。含有量は表示の数値として読めますが、その量が表示どおり入っているかは純度や実測の書面がないと確かめられません。表示は入口、検証は書面、という順序で読みます。
- 認証マークが付いていれば、一段目は通過と考えてよいですか。
- マークの名称だけでは通過としません。発行元がどこかと、対象になっている製品名や登録番号が書かれているかまで見ます。発行元の公開情報で照合できる状態になって初めて、買う側から確かめられる記録になります。
- 3段のふるいは、他のサプリメントにも使えますか。
- 使えます。第三者の書面、退出の条件、扱いやすさという3段の並びは、成分の種類に依存しません。成分ごとに変わるのは、一段目でどの検査書面を探すかという部分だけです。
- 1つに絞ったあと、やっぱり別の製品が気になったときはどうしますか。
- 同じ3段に、その製品を通します。一段目で落ちるなら比較は不要になり、通過するなら二段目と三段目だけを比べれば済みます。同じ順番を使い回せることが、順番を固定しておく利点です。
この記事について
出典
- 一般財団法人 日本食品検査 首都圏事業所 発行 試験成績証明書(第 320G039306-001 号/2021年1月12日/試験方法:高速液体クロマトグラフ法)
- Informed Sport(LGC)証明書(対象製品の登録番号 06465)
- 特定非営利活動法人 日本健康食品規格協会(JIHFS)健康食品GMPに関する公表内容
- ChromaDex(2021)市販NMN製品のラベル表示と実測値に関する調査
- Sandalova et al., GeroScience, 2024(市販18製品の実測とラベル乖離の報告)
- 特定商取引法に基づく表示(通信販売における販売業者名・所在地・連絡先・返品条件の表示)
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9項目の中身を一覧で確かめる場合はチェックリストの記事が近く、書面の読み方を項目ごとに見る場合は証明書1通を読み解いた記事があります。
※本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の疾病の診断・治療・予防を目的としたものではありません。サプリメントの摂取については、かかりつけの医師にご相談ください。
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