結論
『日本製』の表示で確かめられるのは、加工と充填の工程が国内で行われたという完成品段階の事実までです。原料そのものの産地は別の情報で、ラベルの一行だけでは、どこまでが国内なのかを切り分けられません。
『日本製』の表示は、どの書面のどこまでを指しているか?
『日本製』が書面で確かめられるのは、加工と充填の工程が国内であることまでで、原料そのものの産地は同じ書面には含まれません。検査機関が発行した証明書でも、加工地は証明の対象外と注記されることがあります。

手元にある1通の証明書を、記載されているとおりに読みます。発行者は一般財団法人 日本食品検査 首都圏事業所(厚生労働省登録検査機関)で、証明書番号は 320G039306-001、発行日は2021年1月12日です。依頼者の欄には有限会社 沖縄長生薬草本社と書かれており、これは原料の製造を担う事業者です。供試品の純度は99.9%、試験方法は高速液体クロマトグラフ法と記載されています。同じ証明書の附帯事項の欄には日本国内加工という記載があり、その直下に、検体に関する附帯事項は、当法人が証明する事項ではありませんという一文が入っています。つまり加工地の記載は、検査機関が測定した数値とは別の扱いで、依頼者が申告した情報として書き添えられているということです。
完成品としての『日本製』と、原料の産地は、分けて読む必要があります。国内で流通している製品の多くは、原料を半製品の形で国外から取り寄せ、国内で加工と充填を行っています。この形の製品は、完成品としては国内製造にあたりますが、原料の起源まで国内であるとは言えません。ラベルの『日本製』が、加工地だけを指しているのか、原料の産地まで含んでいるのかは、表示の一行だけでは判別できません。確かめる側は、その表示がどの工程を指しているのかを、一段ずつ読み分けることになります。
数量の表示は、掛け算で検算できる情報です。1粒150mg・1箱60粒という表示であれば、総量は9,000mgと計算できます。数量の整合は手元で確かめられますが、加工地や原料の産地は、書面が公開されていなければ確かめようがありません。買う前に手に入るのは、公開されている書面と、その書面が何を証明していて何を証明していないか、という範囲の情報だけです。
| 書面・表示の項目 | この製品で確かめられる内容 | そこから言えること | この情報だけでは言えないこと |
|---|---|---|---|
| 発行者 | 一般財団法人 日本食品検査 首都圏事業所(厚生労働省登録検査機関) | 販売者ではない第三者が測っている | 他の機関が同じ検体を測って同じ数値になるか |
| 証明書番号・発行日 | 第 320G039306-001 号/2021年1月12日 | いつ時点の測定かが特定できる | それ以降に製造されたロットの中身 |
| 供試品の純度・試験方法 | 99.9%/高速液体クロマトグラフ法 | 供試品1点の純度の測定結果 | 箱に入っている粒すべての中身 |
| 附帯事項(加工地) | 日本国内加工(証明対象外の注記つき) | 加工地は依頼者の申告であること | 原料そのものがどこで作られたか |
| 数量の表示 | 1粒150mg・1箱60粒 | 掛け算で総量を検算できる | 表示と実測が一致しているか(開封しないと不明) |
| 原料の産地 | この証明書には記載なし | 書面が示す範囲は加工までであること | 原料の粉体がどこで作られたか |
自社調べ。書面の記載項目をそのまま転記し、証明の範囲と範囲外を分けて整理したものです。
『国内製造』は、原料の産地まで示しているのか?
『国内製造』が示しているのは、加工と充填の工程が国内で行われたという事実で、原料そのものの産地は含みません。原料を国外から取り寄せて国内で仕上げた製品も、完成品としては国内製造にあたります。

表示の言葉は、指している工程がそれぞれ違います。完成品の製造地は、最終的に製品の形へ仕上げた場所を指します。加工地は、粉体を受け取ってカプセルに充填し、箱に詰める工程が行われた場所です。原料の産地は、そのさらに前、粉体としての原料が作られた場所を指します。この3つは連続した工程ですが、別々の場所であることがあり、書面もそれぞれ別に対応します。1通の証明書で3つすべてが確かめられることは、通常ありません。表示を読むときは、その一行が3つのうちどれを指しているのかを、まず切り分ける必要があります。切り分けができると、同じ『日本製』でも、意味の届く範囲が製品ごとに違うことが見えてきます。
日本国内で流通している製品では、原料を半製品の形で国外から取り寄せ、国内で加工と充填を行っている例が多く見られます。この形の製品は、完成品としては国内で作られていますが、原料の起源まで国内であるとは言えません。表示の言葉を、実際より広い範囲を指しているように受け取ると、確かめられる事実と、確かめられていない部分の境目が見えなくなります。境目が引ける表示は、境目が書かれていない表示より、買う側にとって扱いやすい表示です。
この記事で扱わないこと・分かっていないこと
- 原料の産地は、それを示す書面が公開されていない場合、買う前に外から確かめる方法はありません。
- 『日本製』という表示の言葉が、どの工程までを指すかについて、すべての製品に共通する統一された定義があるわけではなく、事業者ごとに範囲が異なることがあります。
- この記事は書面と表示で確かめられる範囲を扱うもので、摂取したときの体感については扱いません。
表示と中身は、どのくらいずれることがあるか?
第三者による市販品の実測調査では、ラベル表示と実際の中身が大きくずれる例が繰り返し報告されています。ずれは小さな誤差ではなく、桁で違う例まで含まれます。
市販品の実測を扱った調査を、対象と数値のまま並べます。ChromaDexが2021年に公表した調査では、販売されていた上位22製品のうち、ラベル表示どおりだったのは14%にとどまり、64%は表示された成分が1%未満だったと報告されています。査読誌でも同じ傾向が示されており、Sandalovaらが2024年にGeroScienceで報告した市販18製品の実測では、ラベル表示に対する乖離が +28.6% から -100% の範囲に広がり、3製品からは対象成分が検出されなかったとされています。マイナス100%とは、書かれているものが入っていなかったという意味です。これらは特定の国や販売経路のサンプルで、日本国内の市場全体を示すものではありませんが、表示の数字と実測が一致するとは限らない、という点は共通して読み取れます。
『日本製』の表示も、数字の表示と同じ構造で読めます。表示の言葉そのものは、書面がなくても印刷できます。言葉を裏づけているのは、その工程がどこで行われたかを示す書面の側です。確かめる側の関心は、『日本製と書いてあるか』ではなく、『どの工程が国内なのかを示す書面があるか』へ移ります。書面がある製品と、言葉だけがある製品を並べたとき、比べているのは製造地そのものではなく、確かめられる度合いです。買う前に手に入る情報は、実際にはこの確かめられる度合いに集約されます。
| 調査 | 対象 | 報告されている乖離 |
|---|---|---|
| ChromaDex 2021 | 上位22製品 | ラベルどおりは14%/64%は表示成分1%未満 |
| Sandalova et al., GeroScience, 2024 | 市販18製品 | +28.6% 〜 -100%/3製品は検出されず |
自社調べ。公表資料の記載を、対象と数値の対応がわかる形に並べ替えたものです。
『日本製』について、買う前に確かめられる項目は何か?
買う前に確かめられるのは、どの工程が国内かを示す書面の有無と、その書面が何を証明しているかの2点に集約されます。次の7項目は、販売ページと公開資料だけで到達できる範囲に絞っています。
7項目は、満たしているものだけを並べたものではありません。公開されないことが多い項目や、そもそも書面が存在しない項目も、あえて含めています。基準表は、満たせない項目が書かれていて初めて基準表として使えるからです。たとえば原料の産地を示す書面は、多くの製品で公開されておらず、確かめられない項目として残ります。7項目のうち何個を満たすかで順位をつけるより、どの項目が空欄のままなのかを控えておくほうが、後から複数の製品を並べて比べるときに役立ちます。買う側から見て『無いことがはっきり分かる』ことも、確かめられたことの一種です。
- 1. 完成品の製造地の表示があるかどこで製品の形に仕上げたかが、販売ページや表示に書かれているか。製造地の記載そのものが無い製品は、ここが最初の空欄になります。
- 2. 加工・充填の国が示されているか粉体をカプセルに充填し箱に詰める工程を、どの国で行っているかの記載があるか。完成品の製造地と同じ場所とは限りません。
- 3. 原料の扱いの説明があるか原料を国外から取り寄せているのか、その旨の説明が公開されているか。説明がある製品ほど、工程の境目が読み取れます。
- 4. 加工地に第三者の注記があるか試験成績証明書などに、加工地が証明の対象外だと注記されているか。範囲を狭く書いてある書面のほうが、実際には扱いやすい書面です。
- 5. 国内の製造管理の水準が示されているか国内GMP水準の製造管理など、工程の管理基準に関する記載や認証マークがあるか。産地ではなく管理の話である点に注意して読みます。
- 6. 製造工程を説明した書面が公開されているか輸入から国内での加工・充填まで、どこを誰が担っているかを説明した書面が公開されているか。
- 7. 数量の表示が掛け算で合っているか1粒あたりの量、粒数、箱あたりの総量が、掛け算で一致しているか。合っていない表示は読み方を誤りやすい表示です。
7項目は、どの順番で確かめると早いか?
確かめる順番は、完成品の製造地の表示から始めて、加工地、原料の扱い、数量の整合の順に降りていくのが最短です。先に言葉の印象で選ぶと、裏づけの無い表示どうしを比べることになります。
手順は4段です。販売ページで完成品の製造地がどう書かれているかを読み、次に加工と充填を行う国の記載を探し、その次に原料を国外から取り寄せているかどうかの説明があるかを見て、最後に数量の表示が掛け算で合うかを確かめます。慣れれば1製品あたり10分ほどで一巡します。表示の言葉しか見つからず、工程を示す書面が出てこない場合は、その時点で次の候補に移るか、販売者に問い合わせるかの分岐になります。問い合わせても出てこない書面は、買った後にも出てきません。逆に、加工地の注記まで含めて書面を示してくる事業者は、確かめる材料を先に渡している事業者です。1回通しておくと、2製品目からは同じ場所を見るだけになり、比べる時間が大きく短くなります。
- 手順1|完成品の製造地を読む販売ページや表示で、どこで製品の形に仕上げたかの記載を探します。記載が無ければ、その旨を控えておきます。
- 手順2|加工・充填の国を確かめる充填と箱詰めの工程を行う国の記載を読みます。完成品の製造地と別に書かれていることがあります。
- 手順3|原料の扱いの説明を探す原料を国外から取り寄せている旨の説明や、製造工程を説明した書面が公開されているかを確認します。
- 手順4|数量の整合を検算する1粒あたりの量 × 粒数 が箱あたりの総量と一致するかを計算します。1粒150mg・1箱60粒であれば総量は9,000mgになります。
表示だけで分かることと、書面がないと分からないことは何か?
表示から分かるのは、事業者が申告した内容です。書面から分かるのは、第三者が測定した内容か、工程を具体的に説明した内容です。同じ『日本製』でも、どちらに書かれているかで意味の強さが変わります。
| 確かめたいこと | ラベル・販売ページの表示だけで分かるか | 書面があれば分かるか |
|---|---|---|
| 完成品の製造地 | 申告として書かれていることがある | 製造工程の説明書面で確かめられる |
| 加工・充填を行う国 | 分からないことがある | 工程の説明書面で確かめられる |
| 加工地が証明の対象か | 分からない | 試験成績証明書の注記で分かる |
| 原料そのものの産地 | 分からないことが多い | 多くの製品では書面が無く分からない |
| 供試品の純度の測定値 | 分からない(申告のみ) | 分かる(供試品1点について) |
| 数量の整合 | 掛け算で検算できる | 掛け算で検算できる |
自社調べ。表示と書面で確かめられる範囲の違いを、確認したい項目ごとに整理したものです。
よくある質問
- 『日本製』のNMNサプリを見分ける基準は、何を見ればよいですか。
- 見るのは『日本製』という言葉そのものではなく、どの工程が国内かを示す書面です。完成品の製造地、加工と充填の国、原料の扱いの説明、この3つがどこまで書面で公開されているかを確かめると、言葉が届いている範囲が切り分けられます。
- 『日本製』かどうかは、検査で確かめられますか。
- 検査で発行される試験成績証明書が示すのは、供試品の純度など測定した数値までです。加工地については、証明の対象外だと注記されることがあります。検査は中身の測定を裏づけますが、製造地そのものを証明する書面とは役割が別だと考えてください。
- 国内製造の体制は、どうやって確認できますか。
- 製造工程を説明した書面が公開されているか、国内GMP水準の製造管理などの管理基準が示されているかを確認します。産地の話と管理の話は別の項目なので、どちらについての記載なのかを読み分けると、確かめられる範囲がはっきりします。
- 『国内製造』と書かれていれば、原料も国内で作られていますか。
- そうとは限りません。国内製造は、加工と充填の工程が国内で行われた事実を指し、原料は国外から取り寄せている例が多く見られます。完成品としての製造地と、原料の産地は、別の情報として分けて読む必要があります。
- 製法の表示から、日本製かどうかは分かりますか。
- 製法の名前(発酵由来か化学合成か)は、その原料がどこで作られたかを示すものではありません。製法はラベルに書けますが、製造地を裏づける書面とは別です。製法名だけを見て産地を推測することはできません。
- 通販で買うとき、鮮度や国内在庫はどう確かめますか。
- 発送元の所在や、在庫を国内で保管しているかどうかの記載を読みます。あわせて、継続して買う場合は直近のロットについて同じ形式の書面が公開されているかが、次の確認点になります。鮮度は言葉の印象ではなく、記録の有無で確かめる項目です。
この記事について
出典
- 一般財団法人 日本食品検査 首都圏事業所 発行 試験成績証明書(第 320G039306-001 号/2021年1月12日/試験方法:高速液体クロマトグラフ法)
- 国内製造の実態に関する説明書面(原料は半製品として輸入し、国内で加工・充填)
- ChromaDex(2021)市販NMN製品のラベル表示と実測値に関する調査
- Sandalova et al., GeroScience, 2024(市販18製品の実測とラベル乖離の報告)
- 国内GMP水準の製造管理(JIHFS)に関する認証の枠組み
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